カーリング物語 第2話【AI】

小説・創作

〜新人、初めての挫折〜

翌日。筋肉痛でロボットのような歩き方をしながら、俺は再びリンクに来てしまっていた。

「……なんで来てるんだ俺」

昨日の出来事が、頭から離れなかった。あのストーンの軌道。最後にピタッと止まった感覚。偶然だったはずなのに、胸のどこかが「もう一回」と騒いでいる。

リンクに入ると、昨日の青年──篠森が、すでに氷の上でストレッチをしていた。

「来ると思ってたよ」

「うわっ、なんで分かるんすか」

「君、好奇心が顔に出るタイプだろ」

言い返したいけど、否定できない。

篠森は軽く顎で合図した。

「今日はチームも来てる。紹介する」

「え、チーム!?」

案内された先には、男女混成の四人組がいた。全員が真剣な目をしながらも、どこか柔らかい雰囲気をまとっている。

「紹介する。ここは俺の所属チーム『フォルテ北野』。地方リーグで活動してる」

「フォルテ……なんか強そう」

「強いよ。今年は全国大会に出る」

その言葉に、思わず息を飲んだ。俺なんかが近寄っていい領域じゃない。

「悠斗くん、よろしくね!」
明るい声の女性が手を振る。
「昨日の一投、篠森から聞いたよ」

「え、あれは偶然で……」

「偶然でもいいの。あれは“伸びる目”をしてる人の投げ方だった」

“伸びる目”。初めて聞いた言葉なのに、胸に刺さった。

その直後、篠森がストーンを渡してきた。

「昨日の軌道、再現してみろ」

「いや、無理っすよ!」

「いいから。やってみろ」

投げ方を思い出す。膝が震える。氷は冷たく、昨日より広く感じる。

ストーンを滑らせた瞬間──

ガッガッガッ……!

最悪だ。途中でバランスを崩し、ストーンは途中で大きく曲がり、まったく違う方向へ転がっていってしまった。

「ご、ごめんなさい……!」

チームの空気が一瞬だけ静まり返る。

しかし、篠森は腕を組んだまま言った。

「それでいい」

「よくないでしょ!!」

「初心者が毎回完璧だったら、逆に怖い。むしろ今日の方が自然だ」

チームのメンバーも頷く。

「カーリングは“氷の読み合い”のスポーツだよ。昨日の一投は確かに良かった。でも、あれを続けるには練習が必要」

篠森は、俺の肩に手を置いた。

「木島。もし本気でやる気があるなら、うちで練習してみないか?」

「……俺が?」

「昨日の“目”を見て決めた。あれは嘘じゃない」

返事をしようとした瞬間、店からの連絡がスマホに来た。まさかのシフト追加。今日は夜まで働くらしい。

「すみません……今日だけは無理っす。明日は来れます」

「じゃあ明日。逃げるなよ」

「逃げませんって!」

リンクを出る頃、胸の中の不安も痛みも、全部まとめて熱に変わっていた。

──俺、もしかして、本当にカーリングやりたいのか?

その問いの答えは、明日リンクに立てば、嫌でも分かるだろう。


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