社畜転生スローライフ ~神様に導かれ、小さな村で畑を耕す~⑳【AI】

小説・創作

第20章:虚風(こかぜ)の谷

風の神殿を後にして三日。 空気は重く、風は止み、空には黒い雲が渦を巻いていた。

「ここが……虚風の谷。」 ルナの声は震えていた。 谷の中心には、黒霧が滞留し、音も光も吸い込んでいく。

ガルドが剣を握りしめる。 「この中に、“黒霧”の正体があるんだな。」 俺は頷いた。 「風の神〈アウラ〉が言っていた。“この地は、かつて神々が封じた心臓”。」

黒霧の正体

谷の中心へ進むと、霧の中から声が響いた。 それは懐かしく、どこか切ない響きだった。

「……ようやく来たか。加護を継ぐ者よ。」

姿を現したのは、黒い風を纏う“もう一人の俺”。 彼は穏やかな笑みを浮かべていた。

「お前は……誰だ?」 「俺は、お前の“願い”だ。 働いて、疲れて、何も得られず……それでも救われたかった“お前の欠片”。」

黒いもう一人俺は続けた。 「お前は優しすぎる。この世界で笑っていられるのは、“現実”を見ないからだ。」 「違う!」 俺は叫んだ。 「俺はもう、誰かのために働ける“幸せ”を知ってる! それがこの世界の真実なんだ!」

その瞬間、風の種が光り輝いた。 ルナが詠唱する。

「――風よ、命の名において祈る。 すべての闇を抱き、再び光へと還れ!」

光が谷を包み、黒霧が少しずつ消えていく。 黒いもう一人の俺は微笑んだまま、風の中に溶けた。

「……ありがとう。お前が俺を、救ってくれた。」

谷に吹く新しい風

霧が晴れ、谷に草花が芽吹き始めた。 止まっていた風が再び吹き出し、命の音が蘇る。

エリアが涙を拭いながら呟いた。 「黒霧は、失われた希望の集合体だったのかもしれませんね。」 「過去を受け入れたからこそ、未来が生まれる。」 俺は空を見上げた。 雲の隙間から、光が差し込む。

帰郷

村に戻ると、リナたちが出迎えた。 「おかえり!」 「ただいま。」 温かい声と笑顔が迎えてくれる。

村の畑には、風の種から芽吹いた新しい植物が育っていた。 それはどんな天候にも負けず、光を集めて成長していく。

俺は微笑んだ。 「これが、風の神の贈り物か……。」 リナが頷く。 「ねえ、この村の名前を決めようよ。」

少し考えて、俺は答えた。 「“風心(ふうしん)の村”はどうだ? 風と心が、共に生きていく場所だから。」

ルナが笑った。 「いい名前!」 ガルドが肩を叩く。 「じゃあ、宴の準備だな!」

風が吹き抜け、畑が揺れた。 俺は静かに空を見上げる。

「ありがとう、神様。 俺はもう、“働くために生きる”んじゃない。 “生きるために働く”ことを、この世界で見つけられた。」

風が優しく答えるように、村の鐘が鳴った。


最終章予告:第21章「風と共に生きる」

黒霧が晴れ、世界は再び豊かに。 俺たちは“新しい村の始まり”を迎える。 それぞれの夢が動き出す、スローライフの真の形へ——。


コメント

タイトルとURLをコピーしました