第19章:風の神殿へ
試練の夜が明け、村の上空に淡い風の光が漂っていた。 その中心に、天空へと続く道のような“風の柱”が立ち昇っている。
「あれが……風の神殿へ続く道だ。」 カイルの言葉に、ルナとレオが息を呑む。
村の人々が見送る中、一行は旅支度を整えた。 リナは温かいスープを渡し、微笑む。
「帰ってきたら、みんなで畑の収穫祭をしようね。」 「もちろん。約束だ。」 俺はその言葉に頷き、風の柱へと足を踏み入れた。
空の回廊
風に乗るようにして、彼らは雲の上を進んだ。 眼下には、これまで旅してきた村や森、川が見える。 まるで、この世界そのものが“風に生かされている”ようだった。
ルナがぽつりと呟く。 「この道……生きてるみたい。」 「風の神殿は、風の精霊たちが守る聖域。 意思を持つ風が、我々を導いているのだろう。」 エリアの声は穏やかだった。
神殿との邂逅
やがて霧が晴れ、巨大な神殿が姿を現した。 白い石造りの柱が無数に並び、中央には透明な風の結晶が浮かんでいる。
「ここが……風の神殿。」 ルナが目を奪われる。 その美しさは言葉では表せないほどだった。
だが、静寂の中に異変があった。 神殿の奥から、低い声が響く。
「ここに来た者よ……“加護の意味”を知る覚悟はあるか?」
その声に応えるように、カイルの胸の“風の欠片”が強く光った。
風の神の声
神殿の中央に、光の風が渦を巻く。 その中から現れたのは、翼を持つ美しい存在——風の神〈アウラ〉だった。
「そなたはかつて、“時の外側”から来た者。 己を犠牲にしてまで働き、生を捨てた人間よ。」
俺は膝をつき、静かに答えた。 「……この世界で、生き直したい。それだけなんだ。」
アウラは微笑んだ。 「ならば問おう。この力をどう使う?」 「守るために使う。村を、仲間を、そして……未来を。」
その瞬間、神殿が光に包まれた。 風が優しく彼らの体を包み、アウラの声が響く。
「よかろう。ならば“風の加護”を継ぐ者として、世界の鼓動を託そう。」 「……行け。黒霧の源“虚風(こかぜ)”を封じ、この地を再び豊穣へ導け。」
光が収まると、俺の手には“風の種”が握られていた。 それは、生命そのものを生み出す力を秘めた種だった。
新たな旅立ち
神殿を後にし、彼らは再び地上へと降り立った。 風は穏やかで、空はどこまでも青い。
「これが……風の神の力。」 レオが種を見つめる。 ルナは微笑みながら答えた。 「そう。でも力を使うのは、神じゃない。私たちよ。」
俺は拳を握った。 「この力で、“生きる”世界を守ろう。」
そして一行は歩き出す。 目指すは、黒霧の中心“虚風の谷”—— この世界を救う最後の旅が、今始まる。
次回予告:第20章「虚風の谷」
闇が渦巻く地へ。 神の加護を受けた俺たちは、世界の根源と対峙する。 しかしそこに待つのは、意外な“再会”だった……。


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