第12章：風と光の宴
夜が訪れた。 村の中央では、焚き火の灯りがゆらめき、木々の間を風が走り抜けていく。 空には満天の星が瞬き、まるで祝福の光が降り注ぐようだった。
リナがスープを運び、ガルドが樽を叩いて笑った。 「よし、宴の始まりだ！」 村の人々が声を上げ、楽器が鳴り響く。
風と光の共鳴
ルナが静かに笛を吹くと、柔らかな風が焚き火を包み、炎が淡い青に染まった。 その風にエリアが手を伸ばし、光の粒が舞い上がる。 空と地を結ぶように、風と光が溶け合っていく。
「……きれい。」 リナがつぶやいた。 俺も見惚れていた。 この光景を、前世の俺はどれだけ夢見ただろうか。 ただ“生きる”ために働き続けた日々。 今は違う。“生きている”と実感できる。
神々の囁き
光の中で、エリアが静かに目を閉じた。 「創生の神より、御言葉を授かりました。」 周囲の音が止み、風の音だけが残る。
『命の村よ。汝らの調和は、美しき風の調べ。 だが、風は常に流れ続ける。 留まることなき者にのみ、新たな加護が芽吹くであろう。』
神の声が消えると、ルナが目を開けた。 「つまり……村は“次の段階”へ進む時期、ということですね。」
俺は頷いた。 「そうだ。ここで満足して止まってしまえば、土も、風も、やがて枯れる。 だから、また新しい風を呼び込もう。」
小さな奇跡
その夜、レオが村の片隅で何かをしていた。 小さな畑に、自分の手で種を植えていたのだ。
「これは何の種だ？」 「俺が旅の途中で見つけたんです。“夜光花”っていうらしくて…… 夜になると、光る花が咲くんだって。」
ルナが微笑んだ。 「風に乗って、良い場所へ届きますように。」 風がふわりと吹き、レオの畑に加護の光が降り注いだ。
翌朝、村のあちこちに淡く光る花が咲いていた。 それは夜でも消えない優しい灯り。 まるで、村そのものが“ひとつの生命”になったようだった。
宴の終わりに
夜が明けるころ、焚き火の火が静かに小さくなっていく。 リナが空を見上げて言った。 「また、新しい朝だね。」 俺は頷き、畑の方を見た。 「ああ。風と光に見守られて、きっとまた良い日になる。」
ルナが微笑む。 「この村は、風の聖地になるかもしれませんね。」 エリアが頷いた。 「ええ、“人と神が共に生きる村”として。」
風が吹いた。 朝日が差し込み、村の光る花々を照らした。 それはまるで、神々が微笑んでいるようだった。
次回予告：第13章「遠くの空からの影」
平穏な日々の中、風が運ぶ“黒い予兆”。 遠くの空に見えた影は、かつて滅びた“古の王国”の残響だった——。
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