3月31日、決断
3月31日、午前6時15分。
まだ薄暗い空の下、高梨陽介は一人、ダイニングテーブルに座っていた。
コーヒーの湯気が、ゆらりと揺れる。
眠れなかったわけではない。
だが、深く眠れたとも言えなかった。
パソコンを開く。
昨夜書きかけたメールが、画面に残っている。
件名:来期体制について
本文は、短い。
何度も書き直した末に、余計な言葉を削ぎ落とした。
残ったのは、本音だけだ。
【高待遇×大手】三菱自動車の期間工・期間従業員で働くなら!
スマホには、転職先企業からの内定通知が保存されている。
期限は今日の正午。
どちらかを選べば、もう片方は消える。
それが決断だ。
陽介は、目を閉じた。
7年前の入社式。
スーツに袖を通し、胸を張っていた自分。
あのときの自分は、何を望んでいた?
安定だろうか。
それとも、成長だろうか。
答えは、もう分かっていた。
三菱自動車の期間工・期間従業員で働くなら!
パソコンの前に座り直す。
カーソルが、静かに点滅している。
陽介はゆっくりとキーボードを打った。
「来期体制のお話ですが、大変ありがたいお申し出ではありますが、今回は辞退させていただきます。」
一文ずつ、噛みしめるように入力する。
送信ボタンの上に、指を置いた。
震えは、もうない。
クリック。
メールは送信済みに移動した。
それだけのことなのに、胸の奥が熱くなる。
すぐにスマホを開き、内定通知の画面へ進む。
「入社を承諾する」
こちらも、迷わなかった。
【高待遇×大手】三菱自動車の期間工・期間従業員で働くなら!
午前8時。
会社へ向かう道は、いつもと同じ景色だ。
だが、足取りはまるで違った。
もう“残るかどうか”を考えなくていい。
選んだのだ。
昼前、森本課長に呼ばれる。
「そうか……」
短い沈黙のあと、彼は言った。
「正直、残ってほしかった。でもな、高梨。自分で決めたなら、それが正解だ」
叱責はなかった。
ただ、少し寂しそうに笑った。
陽介は深く頭を下げる。
「7年間、ありがとうございました」
三菱自動車の期間工・期間従業員で働くなら!
退職の手続きは淡々と進む。
デスクの引き出しを開けると、古い名刺が出てきた。
入社1年目のものだ。
肩書きは「営業部」。
何も持っていなかったあの頃の自分が、今は“選べる立場”にいる。
それだけで、十分だった。
夕方、オフィスを出る。
ビルの外の空気が、少しだけ春の匂いを帯びている。
3月31日。
終わりの日であり、始まりの前日。
【高待遇×大手】三菱自動車の期間工・期間従業員で働くなら!
スマホが震える。
転職エージェントからのメッセージだ。
「ご決断、おめでとうございます。新しいスタートを全力でサポートします。」
陽介は、静かに息を吐いた。
不安がゼロになったわけではない。
むしろ、これからが本番だ。
だがひとつだけ、確かなものがある。
自分で選んだ未来だという事実。
帰宅すると、妻が笑顔で迎えた。
「おかえり。どうだった?」
陽介は頷く。
「終わったよ。全部」
そして、続けた。
「……始まる」
三菱自動車の期間工・期間従業員で働くなら!
夜、窓の外には静かな街灯。
カレンダーをめくる。
4月1日。
白いページが、まっさらな未来のように見えた。
陽介はペンを取り、そのページに書き込む。
「挑戦」
その二文字が、まっすぐに並んだ。
3月31日。
決断は、特別な音を立てない。
だが確かに、人生の歯車を回す。
そして今日、陽介の歯車は――動いた。
(完)
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