コンビニ店員と伝説の「袋いりますか」
深夜二時。僕は近所のコンビニで、人生最大級の選択を迫られていた。
目の前には、若くてやる気に満ちたコンビニ店員。手元には、温められた唐揚げ弁当とカップラーメン、そしてアイス。
「袋、いりますか?」
その一言が、なぜか胸に突き刺さった。
僕は一瞬迷った。エコの時代だ。袋は有料だ。だが、手に持つ商品は三つ。しかもアイスは溶ける。
「……あ、大丈夫です」
口が勝手にそう答えていた。
店員は一瞬だけ僕を見つめ、無言で商品を差し出した。弁当は熱く、アイスは冷たい。温度差で手の感覚がバグる。
レジを離れた瞬間、悲劇は起きた。
アイスが、落ちた。
床に転がるアイス。静まり返る店内。深夜のBGMだけが虚しく流れる。
僕はゆっくりと店員を見る。店員もゆっくりと僕を見る。
「……袋、いりますか?」
さっきよりも、少し優しい声だった。
「……ください」
僕は敗北を認めた。
店員は袋を取り出し、手際よく商品を入れる。そして、床に落ちたアイスを見て、申し訳なさそうに言った。
「新しいの、取ってきますね」
その瞬間、僕は悟った。
最初から袋を頼めば、50円で済んだ。だが今、僕はプライドと時間とアイスの尊厳を失った。
会計を終え、袋を提げて店を出る。
夜風が冷たい。
次に来た時は、迷わない。
「袋、お願いします」
そう、胸を張って言おう。
たとえ、ガム一個でも。
ー完ー

iroha-nihohe


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