3月29日、7日後の未来
3月29日、午後9時18分。
オンライン面談の画面が、静かに暗転した。
「本日はありがとうございました」
最後にそう言って微笑んだ人事担当の顔が、まだ脳裏に残っている。
手応えは、悪くなかった。
むしろ――良かった、と言っていい。
パソコンを閉じたあとも、高梨陽介はしばらく動けなかった。
提示された想定年収。
任されるポジション。
「裁量」という言葉。
今の会社では、聞いたことのない響きだった。
だが同時に、胸の奥に小さな不安が芽生える。
本当にやっていけるのか?
三菱自動車の期間工・期間従業員で働くなら!
陽介はソファに身を沈め、天井を見つめた。
そして、目を閉じる。
もし、転職したら――。
未来A:転職した場合
4月7日。
新しいオフィス。
見慣れないデスク。
誰も自分を知らない空間。
緊張で喉が渇く。
だが、隣の席の同僚が笑いかける。
「高梨さんの提案書、面白いですね」
その一言で、胸の奥が熱くなる。
評価される感覚。
意見が通る実感。
忙しい。責任も重い。
それでも、夜道を歩く足取りは軽い。
「今日も成長できた」
そんな実感がある。
未来B:会社に残った場合
4月7日。
いつものデスク。
見慣れた蛍光灯の光。
チームリーダー補佐としての業務が始まる。
仕事量は確実に増えた。
だが、最終決定権は上司にある。
「高梨、そこは前例通りで頼む」
その言葉に、小さく頷く自分。
安定はある。
だが、胸の奥に残る違和感も消えない。
帰宅途中、ふとスマホを見る。
転職サイトの通知は、もう届かない。
自分で閉じた未来だからだ。
【高待遇×大手】三菱自動車の期間工・期間従業員で働くなら!
目を開ける。
天井は変わらない。
どちらの未来も、まだ現実ではない。
だが確実に言えることがひとつある。
何も選ばなければ、時間だけが進むということだ。
スマホが震える。
面談を受けた企業からのメッセージだった。
「ぜひ次の選考へ進んでいただきたいと考えております」
現実が、未来Aへ一歩近づく。
陽介の喉が、ごくりと鳴った。
次に進めば、引き返せなくなる可能性が高い。
だが、ここで止まれば――。
三菱自動車の期間工・期間従業員で働くなら!
キッチンから水を飲み、深呼吸する。
「怖いのは、失敗じゃない」
そう気づいた。
本当に怖いのは、
何も変わらない未来かもしれない。
カレンダーを見る。
3月31日まで、あと2日。
森本課長への返答期限も、同じ日だ。
偶然とは思えない。
【高待遇×大手】三菱自動車の期間工・期間従業員で働くなら!
パソコンを再び開く。
次の選考へ進むためのフォームが表示される。
名前、連絡先、志望動機。
志望動機の欄で、指が止まった。
本音を書けばいいのか。
それとも、無難な言葉を並べるべきか。
数分間、カーソルが点滅し続ける。
やがて、陽介はゆっくりと打ち込んだ。
「現状に満足していないからです」
送信ボタンが、静かに光る。
指先に、わずかな震え。
それでも――
クリックした。
(第4話へ続く)
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