第18章:影の試練
目を開けると、そこは深い霧の中だった。 足元も見えず、ただ風の音だけが遠くで鳴っている。
「……ここは、どこだ?」 声を出しても、返ってくるのは自分の息づかいだけ。
孤独の試練
俺の前に現れたのは、“もう一人の自分”だった。 社畜時代の俺。 疲れ切った顔で、スーツのままこちらを見つめている。
「お前は、結局何も変わっていない。」 「……。」 「逃げたんだろ? 会社から、現実から、責任から。 この世界に来ても、また“都合のいい居場所”を作ってるだけだ。」
胸が痛んだ。 確かに、あの頃の俺は逃げた。 けれど、この村での生活が嘘だったわけじゃない。 「逃げた先で生き直したって……いいじゃないか。」
スーツ姿の俺は、ゆっくりと微笑んだ。 「そう言えるなら……もう十分だな。」 その姿は、風に溶けるように消えていった。
ルナの試練
一方、ルナの前には“母の幻”が立っていた。 「どうして私を見捨てたの……?」 幼い声が響く。
ルナは膝をつき、涙をこぼした。 「私は……助けられなかった。でも、今はもう逃げない。」 両手を胸に当てると、青い風が舞い上がる。
「私は“誰かを救える自分”でありたい。」 風が光となり、母の影は静かに消えた。
ガルドの試練
ガルドの前には、倒れた仲間たちの幻が並んでいた。 「お前が守れなかった命だ。」 「……違う。俺はあの日、守れなかった。でも、今度は守る。」 彼の拳が光を帯びる。 「仲間のために生きる。それが俺の贖罪だ!」
大地が震え、影が砕け散った。
風の再会
試練を終えると、光が差し込み始めた。 霧が晴れ、仲間たちがひとり、またひとりと戻ってくる。
「……みんな、生きてるか?」 レオの声に、ルナが微笑む。 「ええ。でも、“影の王”はまだ完全に消えていない。」
その時、カイルの胸の石——“風の欠片”が強く光を放った。 「……風の神が、呼んでいる。」 俺の声に、風が吹き抜けた。
空が裂け、光の羽根が舞い降りる。 その中心に、かすかな声が響いた。
――「風の守り人たちよ。影の源へと向かえ。 その先に、“世界の心臓”が眠っている。」
旅は終わりではなく、むしろここから始まる。 風の音が、再び優しく村を包み込んだ。
次回予告:第19章「風の神殿へ」
黒霧の源を絶つため、一行は“風の神殿”を目指す。 新たな仲間、古代の試練、そして“神”の真実が明らかに……。


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