第15章:風を継ぐ者たち
黒霧の村を救い、俺たちは再び拠点の村へ戻った。 空気は澄み渡り、畑には新芽が顔を出している。
「ただいま。」 リナが畑の小屋を見上げながら微笑んだ。 あの混沌をくぐり抜けて、またこの“日常”に戻れた。 ――それだけで、胸の奥が温かくなる。
風の巫女の夢
夜、ルナが珍しく焚き火の前でうなされていた。 額には冷や汗が浮かび、唇が震えている。
「……風が……叫んでる……」 彼女の声に、俺たちは目を覚ます。
「ルナ、どうした?」 「夢の中で、風の神が言いました……“次の継承の時が来た”と。」
ルナの目が真剣だった。 「風の巫女の力は、代々“人の絆”で引き継がれるそうです。 でも、私はまだその意味を知らない。」
古き風の祠へ
翌日、ルナを中心に俺たちは“風の祠”へ向かった。 そこは村の北の丘、古代から“風の源”と呼ばれている場所だった。
風が常に流れ、草木がざわめく。 まるで大地そのものが息をしているようだった。
「……ここだ。」 ルナが杖を掲げると、地面の紋様が淡く光る。
「巫女ルナよ、汝は風の流れを受け継ぐ者か。」 空から声が響いた。 それは、風の神エアリエルの声。
「はい……。ですが、私はまだ未熟です。」 「ならば、“風を継ぐ者”を見つけよ。 風は一人では生きられぬ。絆を結び、共に吹け。」
風が強まり、俺たちの頬を撫でた。 ルナはゆっくりと目を開け、俺を見た。
「……あなたに、お願いしたいのです。」 「え?」 「あなたの中にも、“風”の加護があります。 この世界に来てからずっと、私たちを導いてきた。」
俺は少し照れながらうなずいた。 「俺でいいなら、喜んで。」
継承の儀
ルナが両手を広げ、光の風を呼び出す。 彼女の身体から淡い光が流れ出し、俺の胸へと注ぎ込まれる。
「風よ、絆の証として、共に生きよ。」 風が唸りを上げ、草原がざわめいた。 一瞬、視界が白に包まれ、静寂が訪れる。
……そして。
俺とルナの間に、淡い緑の紋章が浮かんだ。 それは“絆の風印”。
「これで……あなたも風の継承者です。」 ルナが微笑む。 「これからも、共にこの村を見守りましょう。」
風と笑顔
村へ戻ると、リナとガルド、レオが出迎えた。 「なんだよその光る紋章!」 「ちょっとすごいじゃない!」
ルナが微笑みながら説明する。 「これで、村全体に風の加護が宿ります。 畑の実りも、旅の風も、ずっと見守ってくれるはずです。」
俺は畑を見回した。 小麦の穂が揺れ、遠くの山の上で鳥が輪を描いていた。 この世界に来てから初めて、 “未来”という言葉が穏やかに心に浮かんだ。
次回予告:第16章「春の訪れと、新たな命」
長い冬を越え、風の村に春が訪れる。 畑に新しい命が芽吹くとき、村に“新たな仲間”が現れる――。


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