第8章：王都からの使者
初めての市場が成功して数日後。 村には、いつもより少しだけ人の笑い声が増えていた。
レオは毎朝畑に出て、土にまみれながら笑っている。 「見てください！昨日植えた芽が、もう出てます！」 その声を聞くだけで、胸が温かくなった。
——このまま、平和に暮らせたらいい。 そう思っていた矢先だった。
金色の馬車
昼下がり、遠くから蹄の音が響いた。 ガルドが木槌を置き、眉をひそめる。 「おい、誰か来るぞ……あれ、王国の紋章じゃねぇか？」
金の飾りがついた馬車が村の前に止まり、 鎧姿の騎士たちが整然と並んだ。 そして、一人の青年が降り立つ。
白い外套に、王家の印。 青年は落ち着いた口調で名乗った。
「王都より参りました、アルノート・リベルと申します。 “創生の加護”を持つ方が、この村におられると伺いまして。」
エリアが息をのむ。 「……まさか、本当に王都が動くなんて。」
俺は一歩前に出て答えた。 「たぶん、それは俺のことです。」
王の依頼
アルノートは静かにうなずくと、封印の施された巻物を差し出した。 「王が仰せです。“創生の加護”の力を国の再生に役立ててほしいと。」
俺は戸惑った。 村を離れることなど考えたこともなかった。 ここには仲間がいて、守るべき畑がある。
リナが心配そうに見つめる。 「……行くの？」 「分からない。でも、王都が困ってるなら、無視はできない。」
アルノートは微笑んだ。 「あなたの選択に強制はしません。 ただ一つだけ——王都には、あなたと同じ“転生者”がいるのです。」
その言葉に、心がざわついた。 転生者……？ この世界に、俺以外にも？
決意の夜
夜。 村の広場で焚き火を囲み、みんなで話し合った。
ガルドが腕を組んで言う。 「行くしかねぇだろ。国と繋がれば、この村も守られやすくなる。」 リナは俯きながらも、小さく笑った。 「帰ってくる約束、してね。」
レオが拳を握る。 「俺、畑守ってます！おじさんの帰る場所、ちゃんと残します！」
その言葉に胸が熱くなった。 ——もう“働かされる”だけの人生じゃない。 自分の意思で、歩き出せる。
「ありがとう。じゃあ、行ってくるよ。 俺たちの村を、もっと良くするために。」
旅立ちの朝
翌朝、霧の中を一筋の光が射した。 アルノートの馬車がゆっくりと動き出す。 リナが手を振り、ガルドとレオが見送る。
「気をつけてな！」 「王都のパン、食べてみたいなー！」
俺は笑って手を振り返した。 そして、胸の奥で神様の声がかすかに響いた気がした。
「次の地で、もう一つの加護が芽吹くでしょう。」
次回予告：第9章「王都の転生者」
王都へ向かう主人公が出会う“もう一人の転生者”。 彼はかつての上司なのか、それとも——神の試練か。 物語は、再会と選択の章へ。
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