第7章:村の市場と旅立つ少年
風の魔物との戦いから数週間。 村には穏やかな風が吹き、畑には豊かな実りが広がっていた。
「そろそろ収穫祭をやってみようか」 俺が提案すると、リナが目を輝かせた。 「いいね!村の人たちも喜ぶよ。そうだ、市場も開いてみよう!」
市場。 この村で初めての「外との繋がり」だった。
小さな市場のはじまり
ガルドが木の屋台を作り、リナが野菜スープを売る準備を始めた。 俺は畑から採れた野菜を並べる。 トマト、麦、香草、そして“風の実”。 どれも、命の光を宿しているように輝いていた。
エリアが微笑む。 「創生の加護を受けた作物は、周囲の土地まで豊かにするんです。 この市場を通じて、村はきっと広がっていきますよ。」
その言葉通り、森の外から旅人たちが訪れるようになった。 彼らは驚き、笑い、そして言った。
「この村の野菜は、食べると心まで温かくなるな。」
リナが嬉しそうにスープを差し出す。 「それはね、みんなで作った“幸せの味”なんです!」
少年の願い
市場の片隅に、一人の少年が立っていた。 ボロボロの服に、小さな背中。 手には、少しの干し肉と旅の袋。
「おじさん、この村で……働かせてください!」
少年の名は“レオ”。 孤児として街を放浪していたという。 俺たちは相談の末、彼を村に迎えることにした。
「仕事はきつくないか?」 「はいっ!俺、強くなりたいんです! いつか、自分の畑を持って、人を笑顔にできる人になりたい!」
その言葉に、前世の自分が重なった。 働いても感謝されず、ただ“こなすだけ”だった日々。 だが今の俺には、仲間がいて、未来がある。
「よし、じゃあ今日から仲間だ。 この畑は“命の学校”だ。ゆっくり学んでいこう。」
新しい朝
夜明け。 レオは小さな鍬を握り、土を耕していた。 その姿に、リナがそっとお弁当を差し出す。
「お腹すいたら食べてね。愛情スープ入り!」 「ありがとうございますっ!」
ガルドは笑って言った。 「まるで昔のお前を見てるみてぇだな。」 「そうだな。あの頃は、笑う余裕なんてなかったけど……今は違う。」
エリアが風を感じながら微笑む。 「この村は、誰かの居場所を作る場所になっていますね。」
俺は空を見上げた。 神様——ありがとう。 この世界で、ようやく“生きる”ことができています。
次回予告:第8章「王都からの使者」
市場の噂が王都に届き、突然現れる王の使者。 「創生の加護を持つ者」に与えられる選択とは——。


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