社畜転生スローライフ～第4章：村の名と、新たな来訪者～

第4章：村の名と、新たな来訪者

朝日が木々の隙間から差し込み、小屋の壁を黄金色に染めていた。昨夜の焚き火の灰をかき出し、鍋に水を張る。小屋の中には、リナとガルドの穏やかな寝息が響いていた。

「……こういう朝、悪くないな。」社畜だった頃、こんな静けさとは無縁だった。毎朝、鳴り続けるアラームとメールの通知音に追われ、心は常に焦っていた。でも今は違う。時間が“流れている”のではなく、“一緒に生きている”ように感じる。

朝食を終えた三人は、小屋の前で畑を眺めていた。芽吹いた野菜たちが風に揺れ、川面には青空が映っている。

「そろそろ、この場所に名前をつけようか。」とリナが言った。「村の名前？」「そう。ここから始まるんだから、“何かの始まり”を意味する名前がいいな。」

しばらく考え、俺は小さくつぶやいた。「……“ハジマリの村”ってのはどうだ？」「そのまんまじゃねぇか！」とガルドが笑う。だがリナは優しく微笑んだ。

「でも、いいと思う。“ハジマリ”って言葉、なんだか前向きで温かいね。」

こうして、この場所は「ハジマリの村」と名づけられた。

その日の午後、村の入口でガルドが警戒の声を上げた。「誰かが来る！」

森の奥から、白いフードをかぶった少女が現れた。年の頃は十七、八ほど。手には杖を持ち、薄い青色の瞳が静かにこちらを見ている。

「あなたたちが……“転生者”ですか？」

ドキリとした。どうしてそれを知っている？俺が口を開く前に、少女は杖を地面につき、静かに頭を下げた。

「私はエリア。この森の奥にある“精霊の泉”を守る巫女です。最近、この辺りに不思議な力の波動を感じて……まさか、本当に異界の人がいるとは思いませんでした。」

リナとガルドが驚いた表情で顔を見合わせる。エリアは真剣な瞳で俺を見つめた。

「あなたの持つ“神の加護”は、この世界に大きな影響を与えます。どうか——その力を、森を守るために使ってください。」

穏やかな暮らしを望んでいた俺に、突然突きつけられた選択。平穏な日々を続けるか、それとも力を使い、誰かを助けるのか。

「……俺は、ただ静かに暮らしたいだけなんだ。」「それでも、あなたの“静けさ”が森を守ることにつながるのなら？」とエリア。

リナが俺の袖を引く。「ねぇ、私たちも恩返しできるチャンスかも。神様がくれたこの場所を、守るために。」

ガルドが笑って拳を握った。「どうせ暇だ。森を守るくらい、朝の体操代わりだろ！」

俺は苦笑しながらうなずいた。「わかった。やれることを、やってみよう。」

こうして“ハジマリの村”の三人は、エリアという新たな仲間を迎え入れた。穏やかな日々に、少しずつ運命の風が吹き始める。

エリアの導きで訪れた“精霊の泉”。そこで主人公が目にするのは、自分の過去と、神様の真意だった——。