社畜転生スローライフ～第2章：森の恵みとリナの料理～

第2章：森の恵みとリナの料理

朝、鳥のさえずりとともに目を覚ます。昨夜は風の音を聞きながら、焚き火のそばで眠った。まだ粗末な寝床だが、不思議と心は落ち着いている。

隣では、リナが木の枝を束ねて何かを作っていた。「おはよう。何してるんだ？」「おはよう！　薪置き場を作ってるの。朝ごはんにスープを作りたいから！」

スープ。そういえば、昨日植えた芽はもう背丈ほどに育っていた。神様の加護だろうか？　見たこともない野菜が、まるで待っていたかのように実をつけている。

二人で森へ足を踏み入れる。木々の隙間から差し込む光がまぶしい。リナは森に詳しいらしく、食べられる実やキノコを見分けながら、次々とカゴに入れていく。

「これ、“ミルルの実”っていうの。煮込むと甘くて美味しいのよ。」「へぇ、異世界にもフルーツシチューってあるのかもな。」

ふと、茂みの中からガサガサと音がした。振り向くと、小さなウサギのような動物がこちらを見ていた。だがよく見ると、背中に葉っぱのような耳が生えている。

「あっ、リーフラビットだ！」とリナが声を上げる。「おとなしいけど、すごく警戒心が強いの。驚かせないでね。」

俺はそっとしゃがみこみ、手に持ったミルルの実を差し出した。すると、リーフラビットは小さな舌でぺろりとそれを舐め、俺の膝の上に乗ってきた。

「すごい！　もう懐いてる！」「……会社では誰にも懐かれなかったのにな。」「ふふっ、それはきっと、今のあなたの顔が優しいからよ。」

リナの言葉に、思わず頬が熱くなる。森の風が優しく吹き抜けた。

日が暮れるころ、畑に戻った二人は焚き火を囲んで夕食を作った。リナが煮込む鍋からは、ミルルの甘い香りと、野菜のやさしい匂いが広がる。

「できた！　ミルルスープ、召し上がれ！」

ひと口飲むと、身体の奥まで温かさが染みわたる。柔らかい野菜の甘み、森の香り。こんなに穏やかに食事を味わうのは、いつ以来だろう。

「うまいな……。まるで、心まで満たされる感じだ。」「それが“幸せ”ってやつよ。ね、これからも一緒に作っていこう？」「もちろん。」

小さな焚き火の明かりが、二人の笑顔を照らした。畑の向こうでは、今日植えた作物たちが月明かりを浴びて揺れている。 ——この世界なら、本当に“のんびり生きていける”気がした。

畑とスープのある暮らしに、新たな出会いが訪れる。果たして二人の村づくりは、どんな形になっていくのか——。