プロローグ
慶次が刑事になって数か月。
数々の事件を経験する中で、彼の心には一つの想いが積み重なっていた。
――あきらさんに伝えたい。
けれど、伝えられないまま時間だけが過ぎていく。
第一章 不穏な知らせ
ある晩、慶次の元に一本の連絡が入った。
「また、あきらさんが狙われている可能性がある」
数週間前のひき逃げ事件の余波だった。
あの組織の残党が、再び動き出しているという。
慶次の心臓が早鐘のように鳴る。
(今度こそ……絶対に守る)
第二章 夜の追跡
夜の住宅街で、不審な車を尾行する慶次。
しかし、狙いは予想外に早く動いた。
車が急停車し、黒ずくめの男が飛び出してきて――
「やめろッ!」
慶次はとっさにあきらを抱き寄せ、男の刃物をかわした。
「慶次くん!」
驚くあきらの声を背に、慶次は必死に応戦し、やがて応援の伊山と恵子が駆けつけた。
男は取り押さえられ、事件は未然に防がれた。
第三章 揺れる心
事件後、署の屋上。
冷たい風が吹く中、あきらは腕をさすりながら呟いた。
「……また助けられちゃったわね」
「当たり前です。俺は刑事だから……いや、違う」
慶次は深呼吸し、彼女を真っ直ぐに見つめた。
「あきらさん。俺は――刑事だからじゃなくて、あきらさんだから守りたいんだ」
その一言に、あきらの瞳が大きく揺れる。
「ずっと言えなかった。けど……俺は、あきらさんが好きだ」
第四章 答え
沈黙が流れる。
やがて、あきらはそっと慶次に近づいた。
「……ほんと、不器用なんだから」
小さく笑い、彼の胸に額を寄せる。
「でも、そういうところ……嫌いじゃない」
慶次の心臓が跳ねる。
夜風の中、二人の距離はもう言葉を必要としなかった。
エピローグ
数日後。
署内では、恵子が少しふくれっ面で慶次を見つめ、伊山は黙って遠くから二人を見守っていた。
恋も仕事もまだ始まったばかり。
だけど――慶次の隣には、もう確かな存在があった。
彼の初めての告白は、夜空に溶け込むように静かに輝いていた。


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