騒動と急接近
季節は少し進み、体育祭の日が近づいていた。クラス全員がリレーの練習で盛り上がる中、山田はその長身を活かして圧倒的なスピードを披露しようと張り切っていた。
「よし、今度こそ1位だ!」
しかし、その意気込みが仇となる。スタート直後、山田は勢い余ってつまずき、派手に転倒。拍手と悲鳴が入り混じる中、山田は顔を真っ赤にした。
「あ、あれ?…足、早すぎたのかな…」
そのとき、いつも冷静な敦子が駆け寄る。
「もー、山田!何やってるのよ!」
山田は笑いながらも心配そうに、手を伸ばし起こした。
「敦子って、意外と力持ちなんだな…」
敦子は顔を真っ赤にして、思わずツッコミ。
「何その感想!? 助けたからって変なこと言わないでよ!」
二人のやり取りを見ていたクラスメイトたちは、さっそく噂を広め始めた。
「ねえ、山田と敦子って付き合ってるのかな?」
二人は顔を見合わせて大慌て。笑いながらも赤面して、互いの距離を意識するようになる。
放課後、山田は敦子に声をかける。
「あのさ、今日のこと、みんなに見られてたみたいで…」
「うん、わかってる。でも、ちょっと楽しかったかも」
山田は驚きとともに微笑む。こんなに距離が近くて、しかも笑いながら過ごせる相手ができるなんて、思ってもみなかった。
二人の間には、少しずつだが確実に、特別な空気が流れ始めていた。教室の窓から夕陽が差し込み、春の光が二人を優しく照らす。
まだ恋の結末までは遠いけれど、この日、二人は確かに「友達以上」の一歩を踏み出したのだった。


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