カーリング物語 第11話【AI】

4人で投げた1投――チームがひとつになった瞬間

スイープ強化の日から二日後。 リンクに集合すると、長谷川さんが手を叩いて宣言した。

「今日は“チーム連携”を徹底していくよ！」

その言葉に、全員の背筋がピンと伸びる。 カーリングは4人でひとつのストーンを動かすスポーツだ。 誰かひとりの力では成立しない。

■ 最初のテーマは「声」

「スイーパーは“声”を届けないと意味がない。 ラインが曲がり始めたら、迷わずコールして」

最初の課題は、ストーンのラインを見ながら スイーパー同士がリアルタイムで情報を共有すること。

「右、少し走る！」「ハウス手前で曲がる！」「もっとスイープ！いける！」

声を出すほど、みんなの動きが少しずつ合っていく。 しかし――

「……悠斗くん、声が小さい」

佐伯さんに言われ、思わず苦笑する。

自分でも分かっていた。 ストーンを見ながら大声でコールするのは、想像以上に難しい。

「遠慮しないで。 “チームのストーン”なんだから、全員が責任を持つんだよ」

その言葉が胸に刺さる。

■ 4人で作るライン

次は実戦さながらのチーム練習。 スキップの指示でストーンがリリースされ、私たちスイーパーが走る。

「今！ スイープ強め！」

佐伯さんの声を聞き、私は全力でブラシを動かす。 隣のスイーパーとテンポを合わせ、氷の擦れ音が重なる。

すると、後ろから長谷川さんの声が響く。

「いいライン！ そのまま続けて！！」

チーム全体の声が、まるでひとつの指揮のように響く。 ストーンの軌道は安定し、狙っていた位置に止まった。

「……これ、チームで動かした一投ですね」

思わずつぶやくと、佐伯さんが満足そうにうなずいた。

■ ミスが生んだ“本当の連携”

だが、成功ばかりではない。

次のエンドで、私はラインを読み違えた。 「右に曲がる！」と叫んだものの、ストーンはむしろ伸びてしまい、 結果オーバーしてしまった。

「……ごめんなさい」

そう言うと、チームのみんなが笑った。

「謝るゲームじゃないよ、カーリングは」 「ミスを次にどう生かすかが大事だよ」

佐伯さんが最後に言った。

「悠斗くん、さっきの判断は悪くない。 “声を出せるようになった”ことの方が大きいんだ」

その言葉に、胸の奥が少し熱くなった。

■ 練習後に気づいたこと

片付けが終わると、リンクの端で長谷川さんが言った。

「悠斗くん、スイープは上手くなってきた。 あとは“チームで読む”意識を強めよう」

「チームで読む……？」

「そう。自分ひとりでストーンを見るんじゃなくて、 隣のスイーパー、後ろのスキップ、全員と情報を重ねて読む。 それができれば、もう一段階上に行けるよ」

リンクを出る頃には、今日見えた景色が頭から離れなかった。

――ひとりで投げるスポーツじゃない。 4人で“1投”をつくるんだ。

その実感が、次の練習への燃料になっていた。

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